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手軽にテレビの音質アップ! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
家電量販店の店頭には、多種多様なホームシアター製品が並んでいる。現在人気があるのはバータイプスピーカーとサブウーファーを組み合わせた「サウンドバー」だが、いま、各社が相次いで製品を投入している新しいタイプのシステムが「ボードタイプ」と呼ばれるシアターだ。ソニーも2014年のラインナップに、満を持して本機「HT-XT1」を投入してきた。 HT-XT1のような「ボードタイプ」のシアターシステムは、どんな人に向けた製品なのだろうか。まずはそこから考えてみよう。 薄型テレビはAVボードの上に置かれているケースが一般的。そしてテレビの回りには小物が並べられていたり、飾り付けがされている家庭も多いことだろう。「サウンドバー」はそんなテレビ前のスペースを使ってサラウンド再生を実現するが、小さなお子さんがいる家庭では触って落としてしまわないか心配、あるいは薄型テレビの前は愛猫の指定席になっている…などなど、サウンドバーの設置が難しい状況も存在する。 HT-XT1は、そんな悩みにしっかりと答える、新しいスタイルのサラウンドシステムだ。薄型テレビの下に置いて設置するので、テレビ下だけのコンパクトなスペースで完結する。これなら家族の理解も得られやすいだろう。さらには愛猫の居場所もしっかり確保できるというわけだ。ちなみに本機のサイズは幅720×高さ72×奥行き310mm、重量は8kgである。
もちろんソニーが作るのだからHT-XT1のサラウンドシステムとしての機能は本格的だ。ソニーは2014年春にホームシアターシステム4機種を投入しているが、なかでも主力モデルの「HT-CT370」と基本的に共通の機能を備えている。
デジタルアンプ「S-Master」を搭載し、総合出力170Wのハイパワー設計、「S-Force Pro フロントサラウンド」による5.1chバーチャルサラウンド、そしてBDのHDオーディオ「DTS-HD」「ドルビーTrueHD」にも対応したスペックは上位機クラスと言える。 HT-CT370との違いとしては、「ボードタイプ」のため、フロントスピーカーは35×85mmのフルレンジユニット2基となり、またサブウーファーは底面に100mmユニット2基が埋め込まれている。
実際にHT-XT1を目の前にしてみると、最大50インチまでの薄型テレビに対応できるサイズを想定していることもあり、製品の作りは実に上質だ。高級感ある仕上げを見ると、思わず心が躍る。
ソニーらしいこだわりのポイントとしては、まず筐体は一般的なオーディオ用スピーカーで使われる「木箱」構造をベースにしており、音質最優先で設計されていること、そしてブラックでシックな外観にガラス天板を採用したこと。つまり音と外観、ともに力を入れているわけだ。
機能面も「HT-CT370」からそのほとんどを継承しており、「ClearAudio+」による音質の最適化に、Bluetooth&NFCによるスマートフォンとの接続、「SongPal」アプリによるシアターの操作といった機能は同様だ。 そして筆者が注目したいHT-XT1の魅力は、人の声やセリフを聞きやすくする「ボイスアップ」機能を備えたことだ。 ご年配の方はもちろん、30代~40代の読者の皆さんでも、薄型テレビの内蔵スピーカーでセリフが聞き取りにくいと感じることはあるはず。また邦画はセリフのレベルが小さい作品が多いため、ついつい全体の音量を上げがちになるケースが多い。本機の「ボイスアップ」機能は、セリフの明瞭度に重要な周波数帯域を持ち上げることで、声のクリアネスを向上させる。読者が自ら使用するのはもちろん、両親や祖父母のテレビライフをより快適にするためにプレゼントしたら、喜ばれるに違いない。
本機をテストするにあたって、最初に試してみたかったのは「ボイスアップ」機能だ。まだまだ聴力には自信のある30代の筆者にとっても、テレビドラマを見ていると、役者によってはセリフが聞き取りづらいと思う場面があることも事実。そこで、いくつかの番組で「ボイスアップ」機能の効果を試してみた。 一般的なニュース番組やワイドショーの音声であれば、アナウンサーや出演者の音声が聞こえづらいということは、ほぼない。しかし、それでも「ボイスアップ」ボタンを一回押し、デフォルト状態のTYPE1からTYPE2に切り替えると、声の成分が少し浮き立ち明瞭になるので、滑舌がより良くなったように聞こえる。もう一回ボタンを押してTYPE3に切り替えると、7kHzという、ご年配の方では聞き取りにくくなる音のクリアネスがはっきりと向上する。
次に筆者が試してみたのは、NHK大河ドラマ『軍師黒田官兵衛』に黒田職隆役で出演している柴田恭兵さんの声だ。歴史ものらしい喋りかたなのだが、ボイスアップ機能により、歯切れ良く聞こえやすくなる。他にもテレビドラマ『医龍4』では、坂口憲二さんが演じている朝田龍太郎役の無口なキャラクターの声が、より聞き取りやすくなった。 実際にボイスアップ機能を使って気に入ったのは、「ボイスアップ」機能を有効にしても、全体の音のトーンは変化がなく、常時オンにして使っても違和感なく使い続けられるということ。特に最近テレビ番組の声が聞き取りにくくなったという人は、ぜひ試してみてほしい機能だ。
もちろん、HT-XT1はサラウンドシステムとしての音質も一級品だ。映画『パシフィック・リム』では、締まりある低音が迫力満点。独立したサブウーファーを備えるHT-CT370のような重低音は出ないが、逆に本機の低音はヌケが良く、心地よい低音となっており、大音量を出しづらいマンションで映画を観るのに絶妙なバランスに仕上がっている。 アニメBD『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』を視聴しても、凝ったサウンドエフェクトを正確に再現するほか、音の広がりの再現力も高次元。薄型テレビの台座の位置に置かれる製品のため、音場再現力がどの程度か気になっていたのだが、本機が音の広がりにおいても優秀であることが確認できた。
PS4と組み合わせてゲームも楽しんでみた。サウンドフィールドは「GAME」を選択する。サッカーゲーム「FIFA 14」では、ボードタイプということを感じさせない、素晴らしいサラウンドの広がり感に驚かされる。観客の歓声がスタジアム全体を包み込む感覚は、本当のサッカー中継を見ているかのような感覚だ。
アクションゲーム「KNACK」もプレイした。特筆すべきは、効果音の一つ一つが非常に明瞭に聞こえること。足音を例に挙げると、キャラクターが歩いたり走ったりしている床の素材の違いが、音で聴きわけられるのだ。とにかくキレが良く、定位感が良いのはゲームに適しており、ゲームがさらに楽しくプレイできる。本機はHT-CT370と同様に「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」推奨認定を取得しているが、同作のようなゲームで重要となる「どこから音が鳴っているか」という情報も、本機であればしっかりと表現でき、快適なゲームプレイが可能になるはずだ。 「ナイトモード」も試してみた。小音量時でもメリハリの効いたサウンドが楽しめるモードで、その効果は絶大。深夜に映画やゲーム、音楽を楽しみたいという方は多いだろうが、強い味方になるだろう。 もう一つ、HT-XT1はボードタイプということもあり、NFCのタッチ箇所が分かりやすいのも、地味ながら実用的なポイントだ。筆者はNFC対応のXperia Zを所有しているが、NFCマークを見つけてスマホをタッチするとすぐにBluetoothのペアリングが完了し、すぐに音楽再生を楽しめる。そんな使い勝手の良さと分かりやすさにも魅力を感じた。 HT-XT1はソニーが「ボードタイプ」という新たなチャレンジを行ったシアターだが、ベースとなっているテクノロジーはソニーのサウンドバーの系譜を継承し、音質設計と機能面は2014年の主力モデルHT-CT370に近い仕様となっている。一方で「ボイスアップ」機能のように、シニア層に向けた提案もなされている。ボードタイプの使いやすい形状と合わせ、生活により沿うサウンドシステムとしてHT-XT1を幅広いユーザーにお薦めしたい。 (レビュー執筆/折原一也)
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